どこへ行っても、前の仕事を聞かれるので、僕みたいにあまり手に職がついていない人間は色んなことを言ってみる。
その中でも一番まともなキャリアはやっぱり大学生協時代の旅行業なので旅行代理店にいたという説明をする。
住んでる場所と、職場の友達と勤めていた大学の環境が良かっただけなのだが。
本当は行政書士時代の2年間を話すべきなのだが、あまりにも胡散臭い商売をやっていたので語りにくい。
僕なりに、専門知識をたくわえて経営理念を持ってやっていたけど、どうしても胡散臭さが抜けなくて、というか、ほんとはそうじゃなくて、関係各位の胡散臭さに染まることができなくて、つまり、なんというか、青春文学仕込みの精錬さが、僕から抜けなくて、最終的には僕はバイトをやめるように電話が鳴っても出ないようにしてなんとなく商売する雰囲気ではなくなってしまい。
夏の終わりのある日に、こっそり退会届を出したわけです。
「え、辞めたの!」と数人から驚きの声を聞いた頃には僕はもう別の仕事でパンを数えていた。
僕の人生のテーマは逃げる、かもしれない。
そうして逃げてばかりいて、いつの間にか一人になっている。
ということを自己愛たっぷりに書ける僕は、まだ人生を味方につけることができていない。
もう少し言葉を絞り出せる人間になれたらいい。
そうなったら僕も一人じゃなくなるだろう。
最近は切にそう思う。
しかし多くの語られる言葉の中に僕は自らの居場所を感じることができない。
テレビも最近はご飯を食べるときぐらいしか見ないけど、正直、何を言っているのか、よくわからない。
誰かは誰かの書いた原稿をなぞっているだけなんだけど、原稿を書いている誰かも誰かの発言を切り取って書いているだけだから、切り取る人の感覚の違いで少しずつ本来の意図がズレていて、それを見せられている我々もやっぱり少しずつズレている。
でも視聴率のパーセンテージの数だけズレているから、圧倒的にそっちが多数派になる。
まあ、それはいいとしよう。
物事はシンプルに捉えていかないといけない。
図書館で本を借りて、本を読む。
できれば小説がいい。
その中にまともだと思える箇所があれば、それが僕の大事にすべき感覚だと思う。
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