津軽

太宰治の『津軽』が面白いと、実家の父から電話がかかってきた。

「あんないい作品があるとは思わんかったわ」

「『津軽』は比較的に明るい時期に書いてる作品やねん」

「あの中にタケって女が出てくるやろ?」

「それが漱石のキヨやって言いたいんやろ?」

「なんで知っとるんや?」

「知っとるも、なにもずっと言われてきてることやんか」

というような話を6分ぐらい電話で話した。

これはちょっとした思い出になるだろうな、と思った。

父はときどき、とくに酒を飲んでないとき、昔の記憶の文学を語ってくれる。

僕はそれを面倒くさがらずに聞いている。

その本をどう読んだかを、評論ではないカタチで聞いておくことはとても大切だし、それを聞いておけば、今度、僕がその本を読んだときに、その人の感情の記憶を辿ることができる。

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この記事を書いた人

三重県生まれ。現在は給食調理員をしながら両親と3人で暮らしています。趣味の読書と音楽鑑賞に加えて、自分でも様々なものを書いています。

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