古い影

ライ・クーダーを聴いている。

バップ・ドロップ・デラックスという5番目ぐらいに良いアルバム。

たぶんライ・クーダーが好きな人もなかなか持ってないアルバムだ。

僕は少し前まで蒐集癖があったので、この手のアルバムはけっこうたくさん持っていた。

今はもうあんまり持っていない。

気に入らないものはどんどん処分しているから。

僕は自分の古い影を処分しているのである。

好きなビデオテープをDVD化したいという気持ちもあったけど、これに労をかけてDVD化したところで、あと何回見るだろうか。

もしかしてDVD化して残すことが目的となっているのではないだろうか。

DVD化することで、それは別のソフトに変わってしまうんじゃないだろうか。

だったら、今、見ないでいる鮮明な記憶のまま残しておくことがベストなんではないだろうか。

そこに光を当てても、どうしてもそれは今より明るくならない。

古い影。

それを見ていたとき僕はずっと一人だったから。

僕は僕の中に僕以外の人が入り込める余地を作っている。

『夜王子と月の姫』の物語が始まるまでに。

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この記事を書いた人

三重県生まれ。現在は給食調理員をしながら両親と3人で暮らしています。趣味の読書と音楽鑑賞に加えて、自分でも様々なものを書いています。

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