ときどきジャンルがその作家の評価を下げてしまうことがある

夕暮れ、仕事終わり、大学の喫煙所。

静けさ、ツクツクボーシ、なんだろ、寂しさ。

風がやさしくて、いつまでもこうしてたい。

センチメンタル。

そういうものがここにはまだ残っている。

タバコをやめたことを少し後悔する。

家に帰ってジャズを少し大き目の音で聴く。

ジャズをまとめて聴くのは今の季節だけである。

どうしてかわからないけど、一年中ジャズを聴いていることができない。

秋のある一日に無性に、somethin’else を聴きたくなって、そこから、たぶんセーターに袖を通す頃までジャズを聴き続ける。

本は一昨日から『ロング・グッド・バイ』を読んでいる。

僕はマーロウとテリー・レノックスの前半の慣れ染めが好きだ。

友達が出来るというのはこういうことなんだと微笑みながら読む。

レイモンド・チャンドラーはミステリーやらハードボイルド作家やらと言われているけど、僕にとってはやさしさとか人間の節度とかそういうものをとても丁寧に文章にする数少ない純粋な小説家である。

ときどきジャンルがその作家の評価を下げてしまうことがある。

もちろん世の中はその逆の方が多いから、人は自らにジャンルを求めるんだろうけど。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

三重県生まれ。現在は給食調理員をしながら両親と3人で暮らしています。趣味の読書と音楽鑑賞に加えて、自分でも様々なものを書いています。

コメント

コメントする

目次