その街のこども

去年の1月17日に、NHKで放送された『その街のこども』というドラマが今年の1月15日から映画館で劇場版として上映されること知り喜んでいる。

去年、僕はそのドラマを何気なく見ていて、ドラマが終わる頃には、もうテレビの前から離れられなくなってしまっていた。

ああ、凄いいいドラマだと思い、再放送をずっと待っていた。

翌日、そのドラマのことを色々な人に話したけど、誰も見ていなかった。

放送された時間帯がゴールデンじゃなかったからかもしれないけど、そのこと(誰も見ていなかったこと)がとても残念だった。

でも、今回の映画化(ドラマが劇場版になる)で、もう一回、人に薦めることができるから嬉しい。

おそらくこの作品は、残るだろう。

今日、劇場版のホームページで予告を観たけど、くっきりと記憶が残っていた。

なにがそんなにいいのか上手く説明ができないけど、男女の言葉のやりとり中心で繰り広げられるストーリーがとてもぎこちなく、新鮮で、柔らかくて、僕の好きな世界観で作られているからだと思う。

そして舞台が15年後の神戸の1月16日の夜から、1月17日午前5:46までの一夜の設定で、シーンはほとんど夜のシーンが続く。

二人の会話の間に横たわる過去の深刻さに僕は自らの日常の瑣末な悩みを忘れ、あの日の朝、あの瞬間、起こったことがどんなことだったのか、彼らの言葉の重さとして知る。

なにより森山未來も佐藤江梨子も実際の被災者なので、そのことも少なからず関係していて、物語の精度をググッと押し上げている。

僕は小説や映画が持つ物語の力を信じている。

物語は作りごとじゃない。

物語はそれぞれが持っている過去の苦しみや、忘れちゃいけないことを、喚起してくれるもの、それは意図しないでも、突然やってくるもの。

僕らがすっかり忘れていたものをさし出してくれる。

僕らが共感するのはそれが実際に起きたことだから。

『ノルウェイの森』の持つ、大きな力はそれである。

あの作品を理解している人はほとんどいないと僕の友達は言っていたけど、それはほんとで、1000万部も売れたあの作品を本当に理解出来ている人はいないだろう。

でも、僕は18歳のときからあの作品を読んでいて、なにかしら、こころを揺さぶられるものがあるから、未だに物語の外へ出れないでいる。

友人の死や、三角関係、そういう生きていくうちに味わった苦しみを物語は喚起させてくれる。

君は前へ進まなくちゃいけない。

僕はいつまでもここにいてはいけない。

生きて残った僕らは生き続けないといけない。

物語はそういう若かった頃のキモチに決してフタをしない。

未来に持っていけないものを引きうけてくれる場合もある。

そして忘れていけないものをときどきさし出してくれる。

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この記事を書いた人

三重県生まれ。現在は給食調理員をしながら両親と3人で暮らしています。趣味の読書と音楽鑑賞に加えて、自分でも様々なものを書いています。

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