ほんとはなにも楽しくないのに、そこにいることを肯定しないといけない。

学生のとき、美術館ばかり行っている時期があったんだけど、最近は、ぜんぜん行かなくなって、少し前は、その頃の自分のことを芸術家かぶれだと思っていたけど、最近、また絵が見たいと思うようになり、とくに原画のゴツゴツとした質感と、美術館を出た後の感じとか思い出して、なんだろうこの繰り返しやってくる気持ち、と思っている。

安宿を追い出されるようにチェックアウトした後、行くあてもなく、コーヒーを買って公園のベンチで座りながら、「今日どうすっかなあ」とか考えながら、次の街へ行くか、もう一泊するか迷いながら、午前の人通りの少ない街並みを眺めている感じ。

ほんとはなにも楽しくないのに、そこにいることを肯定しないといけない。

旅に似てるのかなあ。

休みになる度に旅に出る人をどこかで軽薄だなあと思っていたりして、バカンスのことを僕はよく思っていない。

にもかかわらず僕は普段からわりと旅のことばかり考えていて、旅に出れずにぐずぐずしている。

別にどこか遠くへ行きたいわけでもなく、ただ、旅に出れないでいることを悔いているだけだ。

しかし、ときどき誰かと会うだけで、遠くへ足を伸ばしただけでも、帰って来た後、これってわりと大きな旅だったかもしれないと思うことがあり、いつもじゃない場所へ行った後の充実感とか考えると、半径2キロぐらいしか移動しない暮らしが僕を閉じこめているのかとも思う。

ここは長くいるべき場所じゃないのかもしれない。

正直、絵の良さも同じで。

ずっと同じようには良く感じれないものだ。

バカンスも、度重なる旅の経験は、たぶん、良くもないのに美術館に足を運んでいるのと同じで、とりあえず見た半券は記念というか、パスポートのスタンプを増やした感じで、充実感はマヒしてしまう。

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この記事を書いた人

三重県生まれ。現在は給食調理員をしながら両親と3人で暮らしています。趣味の読書と音楽鑑賞に加えて、自分でも様々なものを書いています。

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