就職しなかった僕に、夜中、ラジオ深夜便を聴きながら、芥川の『杜子春』の話をしてくれた父のこと

実家から電話があった。親父からである。

だいたい週3回ぐらいこちらから電話するときは、オカンにするんだけど、向こうからかかってくるときはキホン親父がオカンのケータイでかけてくる。

日曜日から、しばらく電話してないなあと思っていたとき、ケータイがぶるぶる震えた。

ちょうど豚汁の弱火の時間だったので、5分ぐらい話した。

とくになんの話もないけど、ソフトバンクのおかげで、かなり日常的に会話を重ねているので、初見の話があまりない。

常に話の続きである。

親父がまくらで最近の出来事をはなして、二番目の兄貴の話(批判的)、一番目の兄貴の話、それから詳しくはオカンから聞く、来週は僕以外の兄貴が仕事の関係で

近くに来るので寄ってくらしい。

大きい兄貴は職場の同僚を連れて伊勢神宮に行くらしい。

小さい兄貴も先月、彼女を連れて伊勢神宮に行ったらしい。

なにかにつけ昔から伊勢神宮へよく家系である。

実家の自慢するとなると伊勢神宮と松阪牛ばかり。

でも、いつか親父の話を書きたいな。

親父は家で古いレジやコピー機を下取りして売っていた。

小学校から帰るといつも家にいて、キャッチボールをした。

よく競艇場へ行って、たい焼きを食べた。

親父の背中と言えば、昼間寝っ転がりながら、新聞読んでいる背中。

僕の本棚の夏目漱石全集は親父の衝動買いの一品。

就職しなかった僕に、夜中、ラジオ深夜便を聴きながら、芥川の『杜子春』の話をしてくれたことは忘れない。

今でも、中日ドラゴンズがサヨナラ勝ちした瞬間には僕んとこに電話してくる。

こっちでは中継はやってないのに。

今日、電話したときも奈良の話をしていた。

奈良はよかったらしい。

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この記事を書いた人

三重県生まれ。現在は給食調理員をしながら両親と3人で暮らしています。趣味の読書と音楽鑑賞に加えて、自分でも様々なものを書いています。

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